2へ進むこと

 たまたまだと思うが、最近他人から「どういうまんがを読んでいますか」と聞かれることが多くて、実は続けて三回もそういうことがあった。ところが、いざ答えるとして、これ一つとなると何を挙げればよいのか、悩んだあげくにちっともまともに答えられず、悔しい思いをしている。

 そもそも、私はまんがの管理が悪い。まんが雑誌を読まなくなっているのが原因の一つだと思うが、読んでいるまんがの単行本の、何巻まで持っていたかをすぐに忘れてしまう。今、本屋にいて、新刊らしきまんが単行本を目の前にしているとして、これのことを、自分は既に買ったのかまだなのか、あるいはもしかして一巻抜けているのか、表紙を見てもオビを読んでもひどいときには中身を見せてもらってもわからず、途方に暮れることも多い。私は意地を張らずに「読んでいるまんがリスト」を作成して、自分が今何巻まで持っているか、書き留めて持ち歩くべきだと思った。

 思っただけで実行はしていないのだが、さて、私が小学生の後ろ半分から中学生くらいの時に読んでいて、私の人生観に大きな影響を与えたまんがの一つとして「炎の転校生」を挙げたい。これは島本和彦が週刊少年サンデーに連載していたもので、転校生滝沢昇が学園にはびこる悪を倒す、とかそういう話だが「奇妙な論理(しかし男子中高生的な思考の中ではちゃんと成立している)を勢いで押し通す」という、私が大好きでずっと心の支えにしている基本ラインの上に、かなりSF的なものも含む、さまざまなアイデアが詰め込まれていて、読み返しても面白い。

 その中で「滝沢2」という話があった。劇中で、主人公滝沢昇は、とても倒せないような強い敵、ではないのだが、ある壁に突き当たる。結局は、努力とあるきっかけ(偶然会った師)によってそれを乗り越えるのだが、そのときに、この男はすでに昨日の滝沢ではないのだ、そうだっ、滝沢2だっ、という盛り上げ方をされているのである。「今!目覚めたこの偉大なる巨人は!!」とか、そういうことが書いてある。

 このとき中高生であった私も影響された。まず他人に金を借りる。借りておいて、次の日、こういうのである。
「は? 金。それはもしかして、大西1にお貸しになったものではないでしょうか。私はこのとおり大西2ですので、ちょっと私のほうからはお返しできません」
 というちょっとひどい話だ。

 それから幾星霜、というほどの時間は経っていないがたぶんおよそ二十年。世界は、ようやくこの「炎の転校生」に追いついてきた気がする。というのも、これだ。

ウェブ2.0

 ウェブ2.0がなにかと私に聞かれても困る。誰かウェブ2.0で商売している人を問い詰めていただきたいが、おおむねブログとか、SNSとか、そういったものを指すのだと思われる。しかしながら、この言葉をはじめて聞いたとき、私だけではなくて、すべての「炎転」のファンがこう思ったに違いない。おおっ、2.0。なるほどウェブ2.0だ、仮に今までのウェブを1.0とすると、今!目覚めたこの偉大なる巨人はそうだウェブ2.0だっ。

 ちなみに、滝沢はさらにそのあと成長し、最終的には滝沢100になる。ウェブもたぶん、そこまでは行くと思う。


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